調査活動報告

会員の皆様のPVの調査を行った時に、その調査活動報告をこのページに個人情報の問題ない範囲で掲載させていただきます。


パワコン冷却用ファンの故障について

◆経緯

 2021年7月埼玉県会員Nさん宅へ、リモート電力センサー(EV06)の設置に訪問した際、「1997年3月に設置した太陽光発電システムの

 パワコンがE26アラーム(機器の高温警告)が出て時々停止する」と話されました。

 特に世話人が係わることなく、Nさん独自で解決されましたが、その経緯をNさんからの情報を元に報告します。

◆今までのトラブル履歴(PVカルテより)

  1.1997年3月、シャープ製、3.26kWの太陽光発電設備を設置

  2.1998年4月、パワーコンディショナ表示が異常となり発電停止。 メーカーによる無償修理。

  3.2004年7月、発電停止。パワーコンディショナ無償交換。

  4.2009年4月、出力低下。パワーコンディショナ無償交換

  5.2021年7月、今回のトラブル;E26アラーム(機器の高温警告)が出て時々停止。

◆処置

 「8月の初めに、メーカーに依頼してパワコンの修理をしました。原因は、パワコンの冷却用ファンの故障による高温でした。エラーは

 もう3年くらい前から頻発していましたから、数年にわたり冷却せずにパワコンを酷使していたことになりますので、もっと早く修理す

 べきだったと後悔しています。」とメールで連絡がありました。

◆考察

 初期のパワコン、屋外用パワコンには冷却用ファンが付いた機種があります。Nさん宅は2009年にパワコンを交換していますので約12

 年使った事になります。設置後で言えば24年経過したことになりますが、それでも修理対応するサービス先と関係を維持しておく事は

 重要です、その点Nさんの対応は素晴らしいです。

 また、アラームの表示に対して対処方法などが書かれた取扱説明書を手元に置いておくことも重要です。     (國井範彰 記)

(さいたま通信 2022年9月号より 転載)


急激に発電量が減った!パワコンの不調が原因(後編)

 埼玉地域交流会ホームページ調査活動報告(下記)に掲載されていますが、2020年夏に発電量が急激に減った櫻花発電所に対して、2021年10月現地調査し太陽光モジュール(パネル)は健全である事、9枚構成のストリングが2系統、6枚構成が2系統の4系統でシステムが構成され、昇圧機能付パワコンが使用されていることなどを確認しました。

 対応策で苦慮したのは昇圧機能の部分への対策で、いろいろ検討しましたが、最終的には昇圧機能は諦めて6枚構成の2系統を9枚構成のストリングと、3枚のモジュールは遊ばせる事とし、9枚構成3系統でも急激に低下した状態よりは改善できると見通しました。

 

 2022年6月11日 梅雨の晴れ間を狙って改善策を実施しました。その後、発電結果をメールで6/12~7/20までで437kWhの発電があったとの報告を頂いています。

 これをPV健康診断で検証してみます。PV健康診断(近隣との比較)で1kW当たりの発電量(単位発電量)の埼玉地域平均6月分は2.90kWh/kW・日となっています。これを適用して試算しますと  2.90×3.9(kW)×39(日)=441kWh となりますが、3枚遊んでいることを考慮すると397kWhです。

 ほぼ正常な発電状態に戻っているものと推察されます。あとは遊んでいる3枚のモジュールの活用法を考えてみます。

(國井範彰 記)

(さいたま通信 2022年7月号より 転載)



急激に発電量が減った!パワコンの不調が原因(前編)

◆経緯

2020年夏、櫻花発電所より急激に発電量が減り、設置業者に見て貰ったが多分パワコンの不調が原因と言われ、交換するには30万円近く掛かるとの事、もっと安価で対応する方法は無いのでしょうかとの連絡を受け、実状調査を開始した。

 =パネル状況=

  (南南東9枚x2系統+西北西6枚x2系統

      入力電圧調整機能マルチ2系統付パワコン使用)

◆調査内容

2021年10月24日KW、KNが訪問

・パワコン交換に20~30万円も掛かるのならその選択肢は諦める 

 とオーナー

・パネルが元気なら中古パワコンを検討してみては?と提案

・4系統IVテスター波形ではパネルはほぼ正常を確認できた

・現在のパワコンの動作は、発電量が一定量上がると、一旦ゼロに

 戻って再度パワコンを起動した時の動作に入り立ち上がる。

 パワコンの機能で出力最大値のポイントを探し始めて、一定量の

 発電量を超えると、またパワコン再起動に入るを繰り返す

 ⇒やはりパワコンの問題と考えられる

・代替えパワコン(PCS)を探す時の留意点:

 この発電所はストリング毎の枚数が違うので、電圧調整(マル

 チ)機能付きのPCSを探す必要が有るが、なかなか中古市場には

 出回らない

・パワコンの状況が悪くなったら、別途入手しやすいパワコンで交

 換する方法を検討する

・3ストリングスのパワコン安く中古で購入して、総工費10万円

 でできないか?

・KNさんのところにあるパワコンを使って仮接続して試験発電し

 てみる。(入力系統が少ないので、単純には付かない)

・長梯子必要。MZさんから借用検討(TIさんから借用、軽トラ付

 但し詳細検討必要)

・系統の組み方により、ブロッキングダイオード必要性を合わせて

 検討する。(パネルの下にブロッキングダイオードを入れるのは

 厳しい)

・9枚2本6枚2本の系統を9枚3系統にする。

・系統から除外した3枚をマイクロインバータ 組み込みを検討

 マイクロインバータ費用は、現在設置されているグリーン電力計

 とパワコンの発電量の差が、マイクロインバーター経由発電とし

 て、発電量に応じた費用を回収する方法を検討

 

最後に

コロナが落ち着いて、作業担当メンバーの作業時間が確保出来る目処が立った頃に、具体的にSさんの意向を伺い調整再開予定

(桑原紀仁 記)



設置22年、会員Aさん宅の発電量低下の経緯・考察

●経緯

2021年1月に会員Aさんから発電量低下の相談があり、2月28日にPV-Net埼玉世話人が、I-V特性をチェックし、3系統のうち2番目の系統が断線状態で有ることが判明しました。

3月5日に業者が点検した結果、8枚のモジュールで構成のうち、1枚が表面のガラスにヒビが入り、セル接続部に異常加熱の痕跡(変色)があり、この1枚が断線状態でありました(右図、写真)。このモジュールを短絡し、7枚構成の系統とすることで発電量が回復しました。

●設備の概要

 1999-2-1設置

 シャープ製(型式;NT51EM6)3.26kW 24枚構成

●トラブル・補修履歴

 2011-2-21;発電量低下でモジュール10枚を交換

 2015-6-30;パワーコンディショナー交換

 2021-3-5;発電量低下でモジュール1枚を短絡し、

      23枚構成で運転

●PV健康診断乖離度から発電量低下(劣化率)推移

 Aさんの発電所は2006年からのPV健康診断が出来てい

 ます。この推定発電量との比較で乖離度の変化を12ヶ

 月移動平均でグラフ化して、その推移を考察します。


※12ヶ月移動平均のため、トラブルや補修の影響は12ヶ月続くが、長期的変化は判り易い。

●考察

 グラフで表されているのは、設置後7年目からで近似線Rの領域ではすでに年-2.6%の発電量低下が始まっています。-2.6%では発電量の保証値「10年間で81%以上」はクリア出来ない、つまり当初想定した以上の劣化が生じている不具合状態であります。おそらく設置当初はもっと少なく-1%以下であったと推測します。

 10年目の時点では発電量保証範囲は超えていただろうからモジュール交換は賢明な対応でした。10枚交換によって約15%発電量が回復したが、発電量低下率は改善されていません、発電量の少ないモジュールを多いものに交換しても本質的な発電能力劣化を改善したものではなかったようです。その後も発電能力劣化は進んでいますが、19年目まで-2.6%程度の劣化率が続いたのはむしろラッキーでした。

15年を過ぎた頃から、劣化率が-3~5%程度となるのはシャープ製で良く見られる傾向です。残念ながら20年目、21年目と劣化が

-3.6%と悪くなっています。今後更に劣化が進んで行くと思われます。また今回の断線の様に急激な変化も有るかも知れません。

 

 毎月の発電量を計測することで異常を早く捕まえる事が出来ます。小さな異常を早く見つけるには、近隣比較が有効です。自分と同じような変化をする発電所を見つけてそこと比較する。又は地域平均の何%という見方も良い方法です。

 今回の補修によってどれだけ発電量が改善されたかはI-V特性を計測することである程度推定できます。時間を見て計測してみたいと考えます。

 会員の皆さんで発電量の低下を感じている方がありましたら、声をかけてみて下さい。

 何かアドバイスすることが出来るかも知れません。                              (國井範彰 記)

  (さいたま通信 2021年5月より 転載)


BPD(バイパスダイオード)調査

 2月12日、深谷市本田にある太陽光発電所でBPD故障調査を実施しました。

 現地は一見したところ大規模発電所のようでしたが、実際は異なる経営者が50kW未満の小規模産業用太陽光発電設備を設置し、それがいくつも集まっているものでした。そのうちの3か所が今回の調査対象でしたが、いずれも設備容量50kW弱のものでした。

 世話人5名と加藤さん(事務局)の6名が夕方4時に集合し、2チームに分かれて調査作業を始めました。電気に詳しい世話人が中心となって調査作業を進め、小生は補助的な数値の記録をすることになりました。

 防寒対策が万全でなかったために寒さとの戦いでもありましたが、作業が終わって現地を離れた8時半ごろの気温は、なんと-2℃となっており、小生にとってこの気温は、この冬初めての体験となりました。(MU記)